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―アルボルズ山脈と北の凍土周辺に光と闇の戦いが続く。 1.半魔 狼人、狐人、猫人、牛人、蛇人・・・さまざまな幼き武装兵は人間の里を避けながら北へ向かっていた。そのリーダーにわずか4歳の上半身人間、下半身が黒の蛇である半人半蛇の男の子がいた。袋を持ち、大事な石版をそこにしまっていた。 「滅んじゃったね。僕らの故郷」狼人ランタが答える。8歳だ。 「女王は決死の戦いで死んでいったんだ」狐人リンダが厳しい表情で言う。女の子で7歳。 「自分の事しか考えない魔は故郷に帰っちゃったけどね〜」猫人ルネが茶々を入れる。同じく7歳の女の子 「なあ、西南には牛人が集うミノスという場所があるぜ?なんておいら達は北に行くの?」疲れる表情で答えたのは6歳の牛人レノン。 「本当に人と平和に過ごせるのかな・・・僕は・・・僕は・・・憎いという言葉以外・・・」アジ・ラーフラが答えた。 「わかんないよ・・・」ランタが答えた。 名目上のリーダーは石版を持つアジ・ラーフラだが、実質上のリーダーはランタだった。狼の牙と爪を活かして、人間が飼っていた夜の牧場にいる子羊などを襲って食べて飢えを凌ぐのがやっとだった。毛皮はアジ・ラーフラの毛布などにも使われた。 草原では騎馬隊に見つからないようにゆっくり歩き、騎馬隊が近づいたら地にふせた。 幸い半魔でも魔法は使えることが出来た。 といっても荷車に魔法をかけてゆっくり動き出すというものだが・・・いざとなったら荷車を置いて逃げた。彼らの嗅覚は人間の数百倍、視覚は数倍あったから容易だった。 1年目の冬は黒き海を経由した。幸い、雪が降らない。 だがそこには信じられない光景が広がっていた。 「見て!騎馬隊が多数死んでるよ!それも丸こげだ!」 それは半魔達の目から見ても悲惨な光景であった。焦土の中に炭と貸した人間達、病気で亡くなってそのまま腐っていく人。 魔にやられたのだ。 「ざまあみろ」牛人レノンが吐き捨てるように言う。 「そんなことよりこいつらの武器とか奪おうぜ!」ルネが現実的な提案をする。 使えるものは持ち去ることにした。剣や鎧はすでに持っていたがとぎ石などの剣を維持する道具、焼け残ったテント、貴金属、篭手などである。 ―憎いのに・・・人間が憎いのに僕はこいつらに同情してる・・・なぜ?上半身が人間だから?僕の父親ってだれなの?本当に母親を置いていって逃げたの?僕はこいつらの血が流れてる・・・ 「俺たちは半分人間なんだ。少しでもいいから弔おう。」アジ・ラーフラが意外な提案をした。 「何でまたそういう余計な事を」レノンが反対した。 「2日でいい。少しでいいんだ。」 「優しい子だこと」あきれるルネ 「まあ、僕も人間に受け容れてもらうには悪くない提案だと思う。墓碑にはあの石碑に書いてある言葉をそのまま入れて立ち去るぞ」 全員の埋葬は無理だったが、腐りかけていた死体から埋葬することにした。 2日どころか、1週間も埋葬作業を行なった。 だが遠くにいる騎馬隊をランタが見つけたので早々にその場を立ち去った。 北にある森を越冬を兼ねて、まっすぐ北へ進んでいった。 季節が夏になるころ、人間がカザンという場所にたどり着いた。 ここが「母が行きなさい」と言ってくれた場所・・・?何もないじゃないか。アジ・ラーフラは愕然とした。そこは小さな村が遠くに見え、あとは深き森が漠然とどこまでも広がっていただけであった。 2.発覚 アジ・ラーフラたちはカザン近郊で農家にいたずらをした。 近所の森に穴を堀り、そこををねぐらとした。そこから農作物を盗み、代わりに盗んだ貴金属を農家に置いたり、お詫びとして農作業を夜に手伝ったりした。 農家たちはやがて妖精のしわざととらえるようになった。 農家もテーブルの上にそっとパンなどを置いたりした。 やがて農民らはホブゴブリンと呼ぶことにした。幸福を呼ぶ鬼の意味であった。 やがて冬がやってきた。それは凍土であった。しかし冬が来てもかれらは凍死することはなかった。彼らが恵んでくれる食糧と牧場で殺した羊の皮と羽毛で凌いだのだ。アジ・ラーフラは下半身を特に気にしてが暖かい毛布が凍死を凌いだのだ。猫人ルネも同じで凍土では死んでしまう。防寒対策は重要だった。ルネが簡単な火の玉の呪文が使えたことも重要だった。暖を取ることが出来たのだ。たしかに凍土なら黄金の大蛇は攻めてくることが出来ない・・・ だが、ある日の夜、農家の備蓄肉を盗もうとした時とうとう農民に見つかってしまった。ランタとレノンが魚の網をかぶせられ身動きできなくなる。とうとう捕まった。農民はその姿を見て唖然とした。 ―魔だ!妖精なんかじゃない。こいつらは半魔だ! 彼らはランタとレノンを縛り上げ農家の広場に集まった。完全防寒した農民に囲まれた。 ―南方で魔の侵略があったと聞いたが、こいつらはそのスパイに違いない。 ―そうだ。今のうちに死刑にすべきだ ―待て!こいつら2匹のはずがない。もっといるはずだ。盗まれた食料の数が半端じゃない。もっと倍以上いるはずだ。 ―ならば半死の状態にして、その後に仲間に案内するのはどうだ? ―それはいい案だ。 「この会話の内容のどっちが魔だ。俺たちの住む魔都はもう滅びた。人間よ!俺たちに居場所をくれ!」 ―信用できるものか。まずは頭が牛の子からだ。見るからに悪魔そうじゃないか。 レノンに次々と剣の傷や鞭の傷が生まれる。悲鳴が深き森に響いた。 「今日はみんな遅いね。」織物をしているアジ・ラーフラが言う。 「何も無いといいのだけど。」ルネが食事の支度をしながら言った。 「今日も野菜鍋か。まあ、暖かくていいけどね。」 「いつも途中でランタの駄洒落で寒くなるけどね。」 「防寒対策はしているんだけどね・・・」 笑いあう2人。 暖かい会話がそこにはあった。だが、今日彼らは戻らない。 3.救済指令 善見城に持て行ったインドラはミスラの剣を床に置き、魔力を剣に放った。すると剣の呪縛が解けていった。そこにいたのはまごうことなき光の鎧をまとった光の神である。姿を見届けると、インドラは天帝の座についた。だが姿は暗黒戦士の姿のままだ。天空の光景としては異様な光景である。 「反逆者阿修羅族のミスラ、いや、弥勒よ。お前はこの世界の救い主でありながら阿修羅族につき、我々を迫害した。その罪は重い。逃げ延びたようだが無駄だったようだな。本来この場で打ち首だ。だが、お前にチャンスをやろう。」 歯軋りするミスラ。 はるか北に魔の迫害から逃れた半魔がいる。 ヴィシャップの子らよ。 ―!! 敵である種族を救って来い。 「そうすればお前を解放してやってもよい。東方では弥勒として善見城で活躍し、西方ではミスラとして活躍してやってもいいぞ。」 「お前はアンラマンユに従う魔王なのだろう。なぜ俺を殺さない。」 「従う?あっはっはっはっはっ」 ぐぐもった声で高笑いするインドラ。 「あれはただの盟約よ。我が治める天界とその俗界にいる人間を傷つけるのをためらう代わりに、鬼の血が騒ぎ出したらお前らが治める阿修羅族の人間を貪り食い、切り殺すことにしたのよ。そこで、アンラマンユと盟約を結んだのさ・・・元の姿である闇の者に変化してな。ただの同盟関係よ。そこに上下関係などないわ。形の上では配下だがな・・・」 ―お前はところで、闇のものまで救う気はないか。 なぜ闇を救う。俺は光の神だぞ。 あの者共を光にすればよいではないか。 我々は闇と飢えに苦しむ闇の者であったがゆえに光を欲した。だが、阿修羅はそれを拒んだ。そこで全面戦争に打って出たのだ。 我々の欲したいたものは「光」だ。 見よ、この天界を。光と豊かさに溢れているではないか。 「何も阿修羅の教義を壊せというのではない。半分光の子らである半魔を救え」 そういうとインドラが高等魔術の呪文を読み上げ、闇の煙を作り上げた。 凝縮して出来たのは闇の輪― なんと、抵抗するミスラをあざ笑うかのように攻撃をすり抜け、ミスラの頭の上に収まった。 「『緊箍の輪』に闇の力を結集させた。」 「貴様!どこまで侮辱するつもりか!」 「どうあがいても取れないのは知っているであろう。」 ぐぐもった声で笑う天帝。 少しでも逆らえばお前の頭部は肉片となる。 もちろん、こやつは闇の力でもってお前の心も蝕んでいくぞ。しまいにはお前は緊箍の輪の力によって魔の姿となるのだ。 またぐぐもった声で高笑いするインドラ。 そうなる前に死ぬことが出来るか?ミスラ。世の救済を目的としたお前には出来ぬよなあ・・・? 今度は四天王が笑い出した。 「お前は仏教の「弥勒」としての使命を忘れ、阿修羅神側についた。その罪を今払え。」 「半魔を救え。弥勒よ、行くのだ。北の大地に。」 憎悪にゆがんだ顔のまま踵を返すミスラ。 そのままミスラは天界を降りていった。・・・・北の大地に向けて。 「できるかな・・・?闇の者を救うことに・・・」 周りの四天王も薄ら笑いを浮かべていた。 それはインドラの新たな策謀であった。 |
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